税理士の経営・財産・相続トピックスVol.085「管理会計の罠」
管理会計の罠
日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 丹羽修二
「会計」という言葉は世間ではあまり使われないため解りづらく、出来れば近寄りたくない分野です。そのため「管理会計」「税務会計」「制度会計」等々の会計がどんな会計なのか、何の目的の会計なのか、どう違うのか?
重要なことですが、難しいのです。
税金を計算する基準の会計を「税務会計」、会計基準による会計、なんらかの基準や制度に基づくものを「制度会計」とここでは呼ぶことにします。
税務会計は「税務」を目的とした会計、会計基準による会計は「株主や債権者」のための会計です。
では、「経営者や従業員」のための会計はどこにあるのでしょうか。それが管理会計です。ですので、決まった基準があるわけではありません。もちろん手法は多々ありますが、要は事業や経営の成長発展に役立つことが重要な会計ということです。
制度会計と管理会計には大きな違いがあります。それは貸借対照表です。
制度会計には必ず貸借対照表があり、重視されます。いわゆるB/SとP/Lはセットです。
一方、管理会計では貸借対照表を使うことは、ゼロではないがほとんどありません。そのため勘違いが起こります。
代表例としては、売上数値だけで経営を把握・管理しており、売上目標は達成して喜んでいたのに、利益は出ていなくて残念だった、という場合です。企業イメージは元気で活発なICT企業でも、利益を見ると上場以来連続赤字という企業も目立ちます。
管理会計は経営のための会計であるため、スピードを優先することにより甘さが出ます。また、人が基準を作って会計を行うので、結果を良く見せようとする意識が働き、ここでも会計が甘くなります。
代表例は速報という指標です。制度会計による実態の利益より管理会計の方が利益が多く見えることが多々あります。しかし、事業や経営の成長発展に役立つためには、制度会計より管理会計の方が厳しくあるべきなのです。
スピード感が求められる速報は事業指標を使い、中途半端な会計数値は使わない。管理会計はあくまでも、制度会計による月次決算数値であるB/SとP/Lを基礎とした会計指標で管理することが重要です。
部分的な感覚数値ではなく、根拠のある会計数値で経営することが事業成長には重要であることをご認識下さい。
2020年9月8日
日本経営ウイル税理士法人
代表社員税理士 丹羽修二
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